かわいクリニック診療科チーフインタビュー|訪問診療で力になれる診療アシスタントの仕事

医療現場で活躍できるのは医師や看護師だけなのでしょうか。「医療資格がなくても、訪問診療の現場で患者さんの力になれるんです」と語るのは、大田区蒲田にあるかわいクリニック診療部診療科チーフの石岡さん。大田区蒲田の地域のなかでどのようなクリニックの役割があるのか、医師や看護師などと一緒に働く診療アシスタントだからこそできる患者さんとの関わりについて伺いました。

PROFILE
ープロフィール紹介ー

石岡慎太郎
医療法人社団洋誠会 かわいクリニック 診療部診療科チーフ
介護福祉士

もっと詳しく

青森県出身。高校まで地元の青森で過ごし、大学進学で上京。「人と接する機会が多い仕事につきたい」という思いから、新卒で世田谷区の有料老人ホームに入職する。20代後半でかわいクリニックに入職し、現在は診療部診療科チーフとして診療アシスタントの教育や育成に携わる。

聞き手:ふじはる、まつなが

この記事の注目ポイント!!

医療資格がなくても、今までやってきたことを活かして新しいことを

医療法人社団洋誠会 かわいクリニック 診療部診療科チーフの石岡さん
ふじはる

かわいクリニックさんは、訪問診療というご自宅に医師が訪問して診療を行う専門のクリニックです。石岡さんは診療部診療科のチーフをされていますが、どのような経緯で入職されたのでしょうか。

石岡さん

新卒で世田谷区の有料老人ホームで働き、利用者さんの生活支援などに携わったり、介護福祉士の資格を取得したりと日々充実していました。ところが、ふと20代後半にさしかかり、将来このまま今の仕事を続けていくのか、それとも今までやってきたことを活かして新しいことをやっていくのかと、転職を考え始めました。転職活動中に以前のかわいクリニックの事務長から転職サイトのダイレクトメールで声をかけていただき、訪問診療の診療アシスタントとして入職しました。

ふじはる

そうだったんですね。かわいクリニックさんがいいなと思ったポイントはなんだったのでしょうか。

石岡さん

訪問診療では医師と一緒に現場に出られるので、これまで身につけたご高齢者とのコミュニケーションスキルや医療接遇を活かせると思ったからです。また、介護と医療は広く捉えると同じ畑に見えますが、異なる領域なので、そこも経験を積んで勉強できたら強みになると感じました。当時、看護師や臨床検査技師のような医療資格がないと現場に出られないと思っていたんですが、医療資格がなくても患者さんの力になれるんだと思ったのが飛び込んだきっかけです。

診療アシスタントが間に入って患者さんの思いを汲み取る

ふじはる

かわいクリニックさんでは幅広い疾患の患者さんに対応していると伺いました。実際にはどのような方が利用されているのでしょうか。

石岡さん

基本的には80代から90代のご高齢の方で、内科全般をカバーしつつも足が悪かったり寝たきりになってしまったりとさまざまな理由で定期的な通院が難しくなっている方が多いです。なかには若い方でも難病によって通院困難な事情を抱えた若い方もいらっしゃいます。内科医を中心に常勤の医師20名と非常勤の医師が在籍しているので、幅広い疾患の患者さんに対応できていると思います。

ふじはる

基本的には地域で治療や通院で困っている方がいたら、かわいクリニックさんのほうで受け入れていらっしゃるのでしょうか。

石岡さん

そうですね。そもそも訪問対応が困難なケースではない限りは、基本的にはお断りしません。忙しくて依頼を受けられないということがないように、常に受け入れ体制を整えています。

ふじはる

私は地域包括支援センターで働いていた経験があるのですが、患者さんを受け入れてくれる訪問診療クリニックさんが見つからない状況がよくあったので、そのようなクリニックさんがいたらとても安心だったなと感じます。

まつなが

そもそも診療部ではどんな仕事をされているのでしょうか。

石岡さん

まず診療部には診療アシスタントと看護師が在籍しています。現場に同行して関係各所と連携をとることが主な業務で、具体的には診療予定の調整をしたり、患者さんと医師の橋渡しをしたりすることが多いです。なぜ医師との橋渡し役をするかというと、医師と直接話すのは萎縮してしまうという患者さんやケアマネジャーさんが大勢いらっしゃるので、我々が間に入った方が緊張感なく本音を引き出せるケースが多いからです。

ただ、依頼を受けたからといって伝言ゲームのようにそのまま医師に連携するのではなく、訪問診療を申し込んだ意図や医師に何をしてほしいのかなど、患者さんの背景や思いを汲み取ることに意味があると思っています。患者さんの背景や思いを汲み取るには、ある程度医療や福祉、介護に関するベーシックな知識がないと難しいので、医療知識や介護知識の勉強にも力を入れています。

ふじはる

なるほど。診療アシスタントは開業当初から在籍していたのでしょうか。

石岡さん

そもそも開業当初は理事長と事務の2人で運営していて、訪問は理事長1人で行なっていたそうです。開業して2年目ごろには業務も複雑になってきたので、診療アシスタントにあたる立場のスタッフを1名採用したのが始まりだったと聞いています。現在は拡大して診療アシスタントと看護師とあわせて50名ほど在籍しています。

ふじはる

スタッフの人数が増えるということは、患者さんやご家族にとってもすごく安心ですよね。

相談のしやすさとフットワークの軽さが地域医療の底上げに

ふじはる

お話を聞いていると、診療アシスタントはまさに患者さんと医師の間に入ってサポートされているのかなと思いました。

石岡さん

そうですね。訪問診療に慣れている医師は患者さんの環境にも配慮して処方薬を調整しますが、1度の訪問診療で診察をしながら医師がすべて行うのは難しいので、医師が診療に集中できるようにサポートするのが診療アシスタントの腕のみせどころなのかなと思います。環境的配慮というとさまざまですが、たとえば患者さんの薬が1日3回となっているけど本当に飲めるのだろうかと考えたり、体調に関する心配事は病院に行ければ確実かもしれないけれど、病院に行けないから我々に頼んでいるという背景とどう折り合いをつけるのかといったことを、患者さんやご家族、医師と相談しながら落としどころをつけていますね

ふじはる

なるほど。患者さんやご家族との信頼関係を築くためには、相手の意図を汲み取ることが必要だと思いますが、訪問の限られた時間のなかでも話をするタイミングは意識しているのでしょうか。

石岡さん

タイミングをみて、あえて診察とは関係のない話をすることもあります。基本的には2週間に1回の頻度で訪問することが多いので、ちょっとした話題を振ったり、反対に振られたりすることもあるので、そんな風に何気ない話でもやりとりをしていると距離は縮まります。言ってしまえば、訪問診療の仕事では訪問して診察をして、お薬を出せば役割を果たせますが、せっかく来てもらったのに「え、それで終わりなの?」と患者さんやご家族は感じると思うんです。診療後、5分くらい世間話をするだけでも全然違うと思うんですよね。

まつなが

お話を聞いていると、医療と生活を繋ぐ診療アシスタントの役割がクリニックのなかでしっかりと機能されているんだなと感じます。他にも石岡さんご自身が仕事をするうえで大事にされていることはありますか。

石岡さん

大事にしているのは、外部から相談しやすい雰囲気をつくること、フットワークを軽くすることの2点です。

「外部から相談しやすい雰囲気をつくる」については、まずどんなに忙しくても柔らかい姿勢で対応しましょう、とスタッフにお願いしています。やはりクリニックに電話するにも勇気を出してくれた患者さんやご家族、医師にちょっとした電話をかけるのも萎縮してしまう関係施設の方が大勢いらっしゃるので。電話1本受けるにしても患者さんや関係者と挨拶するにしても、そこの姿勢ひとつでクリニックの印象が決まってしまいます。当たり前のことですが徹底してもらっています。

また、日頃からケアマネジャーさんや訪問看護ステーションの方との交流の場に積極的に参加するようにしています。実際に顔を合わせて話をすることでクリニックへのフィードバックをいただきやすくなりますし、改善されれば地域医療の底上げにも繋がると思うので、交流の場に出て信頼関係を築くことを大事にしています。

「フットワーク軽くする」というのは、患者さんに呼ばれたら訪問するという受け身の体制ではなく、困りごとを先回りして当院から「伺いましょうか」と声をかけることもときには必要だということです。

訪問診療に来てもらいたいのに、申し訳なくてお願いできないという方は実はたくさんいらっしゃいます。我慢し続けた結果、状態が悪化して救急搬送せざるを得ない状況も少なくありません。普段から患者さんとのコミュニケーションを大切にして相談しやすい雰囲気をつくることで、患者さんの状態の変化にも早期に対応することができると考えています。そうすることで患者さんが安心してお家で暮らすことができたり、病院などの地域の医療機関の負担軽減に繋がったり、さまざまな利点があると思っています。

何かあったら遠慮なく連絡できる安心感を与えたい

ふじはる

診療部があったからこそこんなことができたな、という印象に残っているエピソードがあったら教えてください。

石岡さん

特に印象に残っている話を挙げさせてもらうと、ケアマネジャーさんや訪問看護ステーションから急遽初診の依頼を受けて、当日に当院が対応したことです。そもそも訪問診療は依頼を受けたら初診予定を調整して訪問するのが一般的ですが、当院では当日の初診依頼にも対応できる体制を整えています。訪問診療や在宅医療の場面ではこうしたイレギュラーなケースも少なくはありませんから。

それはあるご高齢の患者さんのケースで、夜中に発熱して同居されている娘さんが救急要請して病院に救急搬送されたそうです。当直の医師は緊急性が低かったので、薬を飲んで家でゆっくり過ごせば大丈夫と判断して薬だけ処方されたようですが、帰っても熱が下がらなくて活気もなく、ご飯も食べられないような状態だったようで。娘さんがかなり心配して担当のケアマネジャーさんに相談したところ、ケアマネジャーさんから我々に状況の説明と訪問の相談があったため対応しました。我々の役割は24時間365日の体制で、医療的な相談できる体制をまず作ることだと思っているので、娘さんも安心されてその後もご相談いただきやすい雰囲気づくりができたなと感じています。

救急の医師が薬を飲んで家でゆっくりしていれば大丈夫と言っても、ご家族は心配なんですよね。我々は患者さんの診療をするだけではなく、安心感を患者さんに与えることも大切な役割のひとつだと思っています。その役割が果たせたと感じたことと、普段から我々が力を入れている相談しやすい雰囲気づくりとフットワークの軽さがそのまま反映されたエピソードだと感じています。

ふじはる

連絡するのが申し訳ないと感じるケアマネジャーさんもいるなかで、そのケアマネジャーさんにとっても「かわいクリニックさんが受け入れてくれる」という信頼感や安心感にも繋がったのではないかと思います。

「柱」となるスタッフを育て、求められることに誠実なクリニックへ

まるでオフィスのようなクリニック。思わず見上げてしまいました。
ふじはる

最後に、記事を読んでくれている方にメッセージをお願いします。

石岡さん

まず大田区でクリニックで働きたいと思っている方へ。私は診療部診療科チーフとして、現場で活躍できるクリニックの柱となるようなスタッフを育てること、当院で働く人にとって働きやすい環境であることを大切にしています。現場のスタッフに医療的な知識だけではなく、環境配慮の知識や医療接遇など底上げできれば、クリニックとしての力も上がると思っていますし、何よりスタッフには心に余裕を持って患者さんと接してもらいたいと思っています。人当たりの良さや接遇面を重視していますので、医療の職場未経験でも診療アシスタントとして大歓迎です。ご興味がある方はぜひいらしてください。

また、大田区にお住まいでご家族の通院や通院先でお困りの方がいたら、ぜひ当院にご相談ください。些細なことでも24時間体制で相談に乗りますし、ご希望あればご自宅まで駆けつけます。お気軽にご相談いただければと思います。

ふじはる

自分の地域にあったらとても安心できる存在だと思います。私も働きたくなってしまうような、素敵なお話をありがとうございました!


ふじはる

ちなみに石岡さんは今、大田区に住まわれているんでしょうか。

石岡さん

実は最近蒲田に家を買いまして(笑)。歩いて通勤しています。

ふじはる

ということは、もうこれからは蒲田で腰を据えてやっていくと…!

石岡さん

そうですね。職場の近くに家が欲しいからっていう衝動的な気持ちでしたが(笑)。もう離れられないですね。蒲田はラーメン屋さんや居酒屋とかの飲食店のレベルが高くて、大好きな街です。ぜひ、蒲田の街にも遊びにきてください!

撮影:八雲
編集:しらいしゆみか

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