【管理者インタビュー】よぞら訪問看護ステーション|関わるすべての人を笑顔に、自分自身も誇れるように

よぞら訪問看護ステーションの画像

訪問看護は、患者さんが自宅で最適な医療ケアを受けるために提供されるサービスです。医師の指示のもと、看護師が患者さんの自宅を訪れ、医療処置や健康相談、病状のモニタリングなどを行います。
※訪問看護について、詳しくはこちらから

今回は、2021年に大田区蒲田で『よぞら訪問看護ステーション』を開設した鈴木 諒平さんに、訪問看護ステーション開設に込めた思いや、今後のビジョンについてお話しを伺いました。

PROFILE
ープロフィール紹介ー

鈴木 諒平
よぞら訪問看護ステーション代表取締役・管理者/看護師・保健師

もっと詳しく

北海道生まれ。大学を卒業後、大田区・蒲田近くにある大学病院の小児科で6年勤務。病院の外で働くことに興味を持ち、訪問看護師として働き始める。横浜や相模原で2つの訪問看護ステーションの立ち上げから関わり、管理者としての経験も積む。2020年には蒲田に戻り、自身の訪問看護ステーションを立ち上げ、2023年9月で3年目に突入。蒲田は初心を忘れたくないと思える場所。家の玄関を開けると、古巣の大学病院が見える。

聞き手:しらいし ゆみか(看護師兼ライター)

この記事の注目ポイント!!

「関わるすべての人を笑顔に」よぞら訪問看護ステーションに込めた思い

よぞら訪問看護ステーションの管理者がインタビューを受けている
しらいし

鈴木さんは、ぷらっとかまたを運営しているまつプロ(まつながプロジェクト)の代表でもあります。今回は訪問看護ステーションの代表取締役としてお話をお聞きしたいと思います。ステーション名が「よぞら」、会社名が「Delight care」と少し変わった名前なのが印象的です。会社のビジョンや名前の由来について教えてください。

鈴木

僕は「関わるすべての人を笑顔にしたい」と常々思っているので、自分たちのケアに喜んでもらえるようなに想いも乗せてケアに当たることを大事にしています。看護師として専門的なサービスを提供するのはもちろんですが、それだけで終わりたくないからです。利用者さんは、病気や障害がある前にひとりの人として自分のやりたいことや理想とする生き方があって、さまざまな事情があるなかで家に帰ってくる。そこに訪問看護師として、僕らが関わらせてもらっています。そのうえで「よぞら訪問看護ステーションに頼んでよかった」「鈴木にお願いしてよかった」と思ってもらいたいんです。

さらにいえば、訪問看護を受ける利用者さんだけでなく、家族や一緒にケアに携わるリハビリスタッフ、ケアマネージャー、医師、 ヘルパーさんなど、他の職種も含めて、よぞらと関われてよかったなと思ってもらえるような働き方を、大切にしています。

こうしたことも含めて、「Delight care , Pride care.」というよぞらの理念には、「ケアに喜びをケアで喜びを。ケアに誇りをケアで誇りを。」という意味があり、利用者さんが笑顔になれる関わり方をしている自分自身にも、誇れるようになってほしいという想いも込めています。 また、僕らは地域にサービスを提供する立場でありながら、同時にその地域で生活を送る住民でもあります。よぞら訪問看護ステーションで働くことに誇りを感じることは、そこで働く地域にとってもいい影響につながるのかなと思っています。

「よぞら」という名前は、ふと東京の夜野街を眺めていて、目に映った家の灯りと星空の星の輝きが重なって見えたときに思いつきました。訪問看護といえば、「ひかり」や「太陽」という明るい名前のイメージがあるかもしれません。だけど、真っ暗で何も見えない夜を照らす月明かりや星明かりのように、その人にとって光明のきっかけになれたら。不安な夜を一緒に乗り越えてあたたかな朝を迎える、そんな想いを込めて「よぞら」という名前にしました。

しらいし

素敵な想いですね…!よぞらさんの特徴は他にもどのようなところにありますか。

鈴木

僕は小児科の経験があるため、小児に関する看護ケアに力を入れています。たとえば、病院の小児科や小児に特化した訪問看護ステーションとも連携しています。

また、大田区の重症心身障がい児(者)等在宅レスパイト事業を積極的に受けているのも特徴です。訪問看護とは別に、区が費用を負担して医療的ケアが必要な人たちのところに看護師がケアにいけるサービスがあるんです。大田区は、レスパイト事業で特別支援学校に看護師が行ける制度になっています。お昼の時間に私たち看護師が学校を訪れ、約2時間の間に吸引や注入などの医療的な処置を行います。生徒たちの送り迎えの際には、バスに同乗し、見守りながら呼吸状態を確認し、必要に応じてケアを行っています。

この事業を行っている訪問看護ステーションは珍しいと思いますね。 子ども本人だけでなく、家族もケアの対象に入るので、 安心して親御さんが任せられる存在でありたいなとも思います。

初心を忘れたくない、この地域に住んでいる人たちの力になりたい

よぞら訪問看護ステーションから見える大田区蒲田の景色
よぞら訪問看護ステーションから見える大田区蒲田の夜景
しらいし

よぞらさんの取り組みがよくわかりました。そもそも、鈴木さんが大田区蒲田で訪問看護ステーションを立ち上げた理由はなんだったんですか。

鈴木

看護大学卒業後は、大田区蒲田近くの大学病院の小児科で働いていました。訪問看護に興味を持ったきっかけは、人生の最後を病院で迎える子やその家族と関わる機会が増え、「もしかしたら家に帰れたんじゃないかな」という思いがあったからです。その後、自分の将来のキャリアを考えるなかでさまざまな経験をしたいと思い転職をしました。

当時は他の地域で訪問看護師として働くなかで、少しずつやってみたかったステーションの運営やマネジメントの仕事にも関わらせてもらうようになり、自分で訪問看護ステーションをやるなら大田区に戻ってこようという想いが強くなっていきました。その理由としては、大学病院に勤めていた頃に、小児の在宅支援に困っている声をよく聞いていたことを思い出したからです。同時に、“この地域に住んでいる人たちの力になりたい”という想いも大きくなっていきました。

しらいし

大田区蒲田に住んでいる人たちの力になりたいという想いが大きくなっていったんですね。

鈴木

そうですね。あと、当時働いていたときは看護師6年目くらいで、自分のことで精一杯だったし、他者に対して十分に目を向けて仕事をできなかったことが、病院を辞めた後も心残りでした。そういう初心を忘れたくないという思いもあって、自分の自宅や訪問看護ステーションは古巣の病院が見える位置をあえて選んでいます。

しらいし

それはすごい覚悟ですね…!実際によぞら訪問看護ステーションの開設から3年が経ちましたが、蒲田の古巣病院の近くに戻ってきてから印象的な出来事はありましたか。

鈴木

元々病院で一緒に働いていた看護師さんから、訪問看護で小児を受けれないかと依頼してもらえることがあり、すごくありがたいなと思います。あと、病院時代に憧れていた訪問看護師さんに挨拶に行ったときはドキドキしました(笑)。自分が病棟の看護師として働いていたとき、カンファレンスによく来てくれてた訪問看護ステーションの看護師さんで、開業したら絶対に挨拶に行こうと決めていたんです。実際に行ってみたら、変わらず気さくで、大田区の医療や介護に関する地域特性を教えてくれたり、親身に相談に乗って、アドバイスをしてくれたり、すごくありがたいなと思いましたね。

しらいし

病院時代からの憧れの看護師さんと今も関わりがあるのは、すごいですね。どんな方なんですか?

鈴木

ひとことでいえば、病院からもお母さんからも、絶大な信頼がある方でした。当時、僕はまだ看護師としての経験が浅く、なにを訪問看護師さんに申し送りしたらいいかわからない状態でした。だけど、その方は患者さんが家へ帰るのに必要な情報を積極的に確認してくれて、こういう情報があると役に立つのかなと直に学ばせてもらっていました。お母さんたちは「○○さんに相談すれば、どんな状況で帰ったとしても大丈夫」とよく話していて、家族との関係の築き方が上手なんだろうな、すごい人なんだなと思っていました。
今は同じエリアで一緒に働くようになり、よりその看護師さんが頼りになる存在であることを実感しています。複数の訪問看護ステーションで同じ利用者さんを担当することもあるんですが、そうしたときに子どもやご家族の観察、アセスメントの力が全然違うなとあらためて目の当たりにしました。個人的には師匠だと思っています(笑)。

もっとフラットに、地域にとって身近な存在を目指して

よぞら訪問看護ステーションの管理者が笑顔でインタビューを受けている
しらいし

今後、よぞら訪問看護ステーションが力を入れていきたいことや目指していくことを教えてください。

鈴木

まずは社内勉強会だけでなく、地域における訪問看護の質の向上に貢献したいと考えています。訪問看護に関わる人と、お互いの業務を知ることはすごく大事だと思っているので、スタッフからの意見を取り入れて、積極的に学びの機会を作るようにしています。最近では「訪問看護から葬儀屋さんにスムーズにケアを繋いでいきたい」というスタッフの話から、葬儀屋さんと日本のエンバーミングの第一人者である方を招いて勉強会を開催しました。この勉強会では、葬儀屋さんがどのような活動を行っているのか、我々が提供するエンゼルケアで葬儀屋さんから学べることについて学びました。また、今年からは学生の実習を受け入れ始め、実習生が”いい実習だったな”と思える経験を提供できるよう心がけています。これは今後も継続していきたいです。

他には、障害のある人が社会に参加できる場所をつくれたらと思っています。この3年で、病状は安定しているけれど、支援が必要な人たちがいることがわかり、そのような人たちとの関わりが増えたからです。訪問看護は週に何回、1回に何十分と、時間に限りがあるんですよね。もちろん訪問看護の利用は必要なんですけど、 同時に医療的なケアが必要な人たちが、社会から隔離された生活を送ることを目の当たりにしていました。たとえば子どもの場合、病気を抱えて医療的なケアが必要な人たちが高校を卒業し、社会に出ていく段階で、社会に所属していると感じられる場所を提供できればと思っています。

しらいし

それでは最後に、読者に対してメッセージをお願いします。

鈴木

蒲田の地域の方に、もっとフラットに、訪問看護を知ってもらえたらと思います。そもそも、訪問看護って聞き慣れない、あまり馴染みがないかもしれません。自分が病気で訪問看護が必要な状況にならないと直接関わることがないので、仕事内容もなかなか理解しづらいものかもしれません。訪問看護と訪問介護の役割の違いなども、専門でない方にはあまりメジャーではないと思いますが、「訪問看護って家でこんなケアができるんだよ」と、もっとフラットに知ってもらえたら嬉しいですね。

また、訪問看護は看護師だけのもの、医療や介護系のサービスだけでなく、新聞配達の方やヤクルトレディなど、地域の人々と連携しながらサービスを届けていることもあります。私たちが関わる範囲は、医療だけに限らないので、もっと広く知っていただいて、地域にとってもっと身近な存在になってほしいなと思います。

よぞら訪問看護ステーション管理者と大田区蒲田の夜空

撮影・編集:しらいしゆみか

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