【インタビュー】地域の在宅医療を支える訪問看護師―“ちゃんとやる”想いが導くキャリア

看護師として病院で経験を積みながら、訪問看護のバイトを掛け持ちしていた大島 慎二さん。病院の患者さんが「おうちに帰りたい」と口にする姿を見て、在宅医療の可能性に気付いたことが、訪問看護への転職を決意したきっかけでした。

以来、管理者として数々の事業所の立ち上げに携わり、現在は仁済訪問看護ステーション品川でその舵を取っています。地域とのつながりを大切にし、「困っている人を助ける」という信念のもと、訪問看護の現場を支え続ける大島さんの想いを聞きました!

PROFILE
ープロフィール紹介ー

大島 慎二(おおしま しんじ)さん
仁済訪問看護ステーション品川 課長/訪問看護師
2008年戸田中央看護専門学校を卒業。大田池上病院に6年間勤務した後、訪問看護師に転職。2014年ぜん訪問看護ステーションで管理者として3年間勤務。その後2017年仁済訪問看護ステーション品川に入職し、現在8年目。
2023年蒲田サテライトを新設、2024年蒲田サテライトがステーションとして独立。現在は仁済訪問看護ステーション品川で管理者を務める。

聞き手:まつなが・ぽりまー

大島さん

病院時代に訪問看護のバイトと両立しており、その時に訪問看護の魅力を感じました。在宅で生活する人を支えたいとの思いで訪問看護に転職し、現在に至ります。

この記事の注目ポイント!!

病院と訪看の掛け持ちから、訪看に転職

まつなが

病院時代に訪問看護のバイトをしてたそうですが、どういうスケジュールだったんですか?

大島さん

病院では、平日に病棟とオペ室を担当していて、土日は固定で夜勤だったので、夜勤明けで訪問看護のバイトをしていました。

まつなが

めちゃくちゃ多忙ですね…!

大島さん

いや、むしろ暇だったからできたんです。

まつなが

そのままバイト先に転職という形ですよね。訪問看護のどの辺に魅力を感じたんですか?

大島さん

病棟の患者さんと話すと、「おうちに帰りたい」ってめっちゃ言われたんです。「じゃあ、ちょっと在宅も見てみよう」と訪問看護をやってみたら、在宅の患者さんの表情が病院と全然違ったので、やっぱり、家に帰れるんだったらそのほうがいいんだと思いました。

ぽりまー

両方を見たゆえの説得力…!

大島さん

それで、在宅を受け入れられる体制をもっと増やしてあげたいと思ったのがきっかけですね。バイト先のぜん訪問看護ステーションは新しい事務所の立ち上げをやっている会社で、病院を辞めるタイミングで管理者として雇ってくれると言われて入りました。

まつなが

なるほどです!前々から知り合いでしたが、意外とこういう話は聞いてなかったですね。

大島さん

はじめは大田区の上池台にいたんですが、そののち蒲田に事業所を作って、そうこうしているうちに5ヵ所を自分が見る形になっていました。その辺りから会社もいろいろ変わって、条件が合わなくなったので辞めることになったんですが、次の就職先が決まっていなくて。

ぽりまー

そういうこともありますよね~。

大島さん

どうしようかという時に、友達が紹介してくれたのが今いる仁済訪問看護ステーションでした。ちょうど立ち上げ直後のタイミングで、「じゃあ1回社長に会おう」と居酒屋で一緒に飲んで、意気投合しました。

社内連携と地域の支え合い

まつなが

別の訪問看護ステーションを経験された後、今の仁済に入って変わったことはありますか?

大島さん

前の会社は訪問看護事業だけだったんですが、今の会社は介護職員(ヘルパー)の研修事業や、居宅介護支援事業、福祉用具貸与販売事業など、介護サービスを幅広く取り扱っているので、他職種との連携はすごく取りやすくなりました。

まつなが

同じオフィスにいるから相談しやすいんですか?

大島さん

事業所はバラバラなので、直接訪問して聞いたり、電話したりですね。

まつなが

社内連携は大きい会社の魅力ですよね。訪問看護だけだと、周辺サービスはすべて他社との連携になってしまいますが、自社の中でそういうふうに他職種との連携が取りやすいのは羨ましいです。

大島さん

連携のしやすさ自体はそんなに変わらないですが、「これ何だろう?」って気軽に聞きやすいのは断然社内ですね。契約や担当者会議の時など定期的に顔を合わせるので、コミュニケーションのハードルが下がるといいますか。でも、担当者を自社で固めようとか、そういう意図はまったくありません。

まつなが

社内の風通しがよさそうですね!

大島さん

もちろん状況によって、他社にお願いすることもありますよ。利用者さんの状態や、都合のつく曜日、時間などが合わない場合もあるので、無理して合わせるよりは、できるところにお願いした方がいいと考えています。

まつなが

僕もいつもお世話になってますが、地域でそうやって支え合えるのって、めちゃくちゃありがたいですよね。

別エリアを経験したからこそわかる地域差

まつなが

いくつかのエリアを見てきた中で、地域差を感じる部分はありましたか?

大島さん

最初にいた大田区と、今管理者をやっている品川区では在宅現場の雰囲気が全然違いますね。端的に言うと、品川区はビジネスライク、大田区はもう少しフランクな雰囲気です。

そもそも、大田区は居宅介護支援事業所の数が多いので、お互いに合うところを選んでやり取りすることが可能ですが、品川区は高齢者の数に対して事業所の数が少ないので、そうもいかない現状があります。クレーム対応にもかなり慎重になりますね。

まつなが

そんなに違うんですね。

大島さん

蒲田は仕事をしていて楽しかったですね。かかわる医療者たちの人柄があたたかくて。利用者さんは大変なケースが多かったですが、その分やりがいがあって、多職種で一緒に考えるのが楽しかったです。

まつなが

今は、現場にはあまり出てない感じですか?

大島さん

いや、全然出てます(笑)。

まつなが

スタッフのマネジメントをしながら、自分でも訪問してるってことですか?

大島さん

そうです。自分が課長で、下に主任が4人いるので基本は任せていますが、スタッフが困っていたら相談しに来てくれるので、そういう時は訪問に同行しています。

まつなが

現場にはどのぐらいの頻度で行くんですか?

大島さん

月1~2回ですかね。「このケアは初めてだから不安」とか、そういうサポートで行くことが多いです。

ぽりまー

ご経歴を見ると、訪問看護師に転職されてからはずっと管理者をされていますよね。現場にいる時間が短い中で、どうやってスタッフから情報収集をしているんですか?

大島さん

今は、週2回カンファレンスをしていて、そこで変化がある人の話を聞いていますね。特に報告がない人は、落ち着いてるのかなという判断です。

まつなが

どのぐらい時間をかけるんですか?

大島さん

10~15分です。 週2回のうち、全スタッフがどちらかは参加できるように組んでいます。

蒲田の事業所にも週1回ほど訪問していて、営業の方法やマニュアル整備について助言をしています。蒲田と品川でやり方が違ったらよくないので。

自らの患者経験が、“ちゃんとやりたい”の原動力に

まつなが

そもそも、なぜ看護師になろうと思ったのか、聞いても良いですか?

大島さん

僕、腕の手術を3回経験してるんです。1番覚えているのは高校の時かな。体育でタックルされて折れちゃって入院したんですが、毎日めちゃめちゃ暇で。だから、「この人たち何やってんのかなー」って、病室に来る看護師たちを観察してたんです。

でも、1日数回来るのかと思いきや、朝1回処置して終わり。めっちゃ楽な仕事に見えるけど、実際はわからないから知りたいと思ったのがきっかけですかね。

まつなが

なんか、面白いですね(笑)。

大島さん

いや、ちゃんとやるならやってよ、そうじゃないなら早く帰らせてよって思って。なのに、病室から抜け出したらめっちゃ怒られるし、時間を守らなかったらめっちゃ注意されるし……。※高校生男児の思考

まつなが

その当時はまだ、男性看護師さんってそんなに多くなかったと思うんですが、印象に残った人がいたとか、そういうことは?

大島さん

ないですね(笑)。看護師が全然来てくれなくて、何もしてくれないから、それがすごく嫌で。「そんなに暇なのか、自分で確かめてみよう」と、実際に看護師になってみたら、やることいっぱいあるじゃんって思いました。

筋トレとかストレッチとか、「言ってくれたらやるのに(ちゃんとやってほしい)」という気持ちが、今の「ちゃんとやりたい」につながっていますね。

まつなが

管理業務って、興味がある人とそうじゃない人に結構分かれると思うんですが、大島さんが管理業務に興味を持ったのは、その辺の経験も関係しているのでしょうか?

大島さん

そうですね、「ちゃんとやろうよ」って言うために管理者になった一面はあるかもしれません。管理業務というか、「ちゃんとした人を育てたい」という思いの方が優先ですね。これに対して、ちゃんとやれる環境を作ろう、と管理業務がくっついてきた形です。

まつなが

珍しいパターンですね。

大島さん

今は訪問看護師として、利用者さんを訪問する時間は、その人のためにちゃんと使える人材を育てたいという思いがあります。

横のつながり=会社・職場を越えたもの

まつなが

これから先について考えていることはありますか?

大島さん

在宅業界では、横のつながりを大事にしていきたいっていう気持ちがありますね。今回のインタビューみたいに、地域の発信にも協力できることがあればするし。

例えば、僕とまつながさんがつながって、まつながさんが福祉用具専門相談員とつながって、3人が飲み会で仲良くなって。そこから、もし同じ利用者さんのケースに入った時に、「この人こういう持病があるから、ここにも手すり入れた方がいいよ」とか、「こういう用具があった方がいいよ」とか、気軽に相談できたり、向こうからも提案しやすいような関係性ができたらいいですよね。

まつなが

そういった横のつながりを増やしていくためには、何が必要なんですかね…。

大島さん

一番はそういう場所かなと。最初にいた上池台の事務所は、アパートの1階でちょっとした庭があって、ウッドデッキを買ってBBQを企画したんですよ。それで、近くのケアマネさんとか呼んで。

まつなが

面白いですね。どのぐらいの規模でやってたんですか?

大島さん

だいたい15人ぐらいだったかな。

まつなが

結構集まりますね。開催してみて手ごたえはあったんですか?

大島さん

手応えっていうか、その場で相談されて仕事が来ます(笑)。あとは、話すとその人のことを知れるので、気軽に相談しやすくなるし、向こうからも「これってどういうことなの?」って聞いてくれるようになったりとか。

看護師って、なんか怖いとか、言いづらいとか思われやすいから、「言ってもいいんだ」って思わせたもん勝ちじゃないですか?

ぽりまー

逆転の発想…!

大島さん

よく質問を受けたのは、医療・介護保険制度のことですね。在宅はチームでやることだから、利用者さんのことももちろん知っていかなきゃいけないけど、そこに関わっている人たちについても僕は興味があるから、知りたい。

その地域として、困っている人たちのことを知って、手助けできることがあればやるという世界観が作れたらいいなと思ってやっています。

まつなが

相談し合える場所みたいなのが増えていくと、横のつながりが増えていって、将来的には利用者さんにもきちんと還元されるんですね。

ずっと大事にしていること「困っている人を助ける」

まつなが

僕らは、地域で働く人たちの情熱をメディアの力で届けられたらいいなと思ってこの活動を始めたんですが、大島さんの“思い”はどこに根ざしているんでしょうか?

大島さん

利用者さんのことを最優先にして、僕らには何ができるのかなというのは、常に考えています。利用者さんがいて、俺らがいるので。だから、例えば利用者さんが「リハビリでだいぶ良くなってきた」という時は、卒業の方向に動きます。サービスを惰性で続けず、良くなったら卒業してもらって、また調子が悪くなったらうちに来てねという形をとっています。

ぽりまー

終わりを見据えるのって、できるようでなかなかできないんですよね。すごいです。

大島さん

会社の理念が、「仁(ひと)しく人を済(すく)う」で「仁済」という名称なので。もし移動中の道端に人が倒れていたら、訪問途中でも救助して、会社と訪問先には遅れることを連絡します。それができなくなったら、自分はここにいる必要がないと思います。

まつなが

ご自身の仕事に対する姿勢というか、看護師としての思いと、今働いている職場の理念がしっかりマッチしていて、とても素敵ですね。

今日はお忙しいところ、ありがとうございました!

文・撮影:ぽりまー

会社データ
・会社名:株式会社 仁済
・所在地:東京都品川区大井1-49-12 大井町ビル3F
・設立年:1939年
・ホームページ:https://www.jinsai.co.jp/

仁済訪問看護ステーション品川
・所在地:東京都品川区二葉1-12-8 マメゾン二葉1F
・営業時間:月~金曜日9:00~18:00(土日祝休み、緊急対応のみ24時間対応)
・従業員数:常勤看護師10名、非常勤看護師1名、理学療法士3名、作業療法士1名、事務員1名
・主な訪問
体調確認、服薬管理、生活指導、入浴介助、医療機器の管理、リハビリテーション
・特徴
スタッフの平均が20代後半~30代後半がほとんどです。
自立支援医療対応、労災対応可能、自費訪問対応可能

仁済訪問看護ステーション蒲田
・所在地:東京都大田区蒲田3-15-12 蒲田3丁目事務所
・営業時間:月~金曜日9:00~18:00(土日祝休み、緊急対応のみ24時間対応)
・従業員数:常勤看護師4名、理学療法士2名、作業療法士1名、事務員1名

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