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【インタビュー】伴走者として「その人らしさ」を支えたい。ケアマネジャーが紡ぐ支援の輪

「地域の人々と共に歩む病院」を理念に、無差別平等の医療を実践する大田病院。その理念は、退院後の在宅生活を支える現場でも貫かれています。大田病院と同じ法人の「おおもりまち訪問看護ステーション・居宅介護支援事業所」で働く介護支援専門員(ケアマネジャー)、辻加奈江さんと大谷由美さん。法人内のさまざまな部門と連携しながら、「その人らしい」暮らしを支えるお二人に話を伺いました

PROFILE
ープロフィール紹介ー


辻 加奈江(つじかなえ)さん
社会医療法人財団おおもりまち訪問看護ステーション介護保険室 管理者 主任介護支援専門員

介護職からスタートし、20代後半で夜間の大学に通い社会福祉士の資格を取得。病院ソーシャルワーカー、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所でキャリアを積み、2023年から現職。


大谷 由美(おおたにゆみ)さん
介護支援専門員

26歳で重症心身障害者施設に入職。18年前に複合型福祉施設でデイサービスの管理者を経験し、ケアマネジャーの資格を取得。グループホームでケアマネ、管理者を兼務した後、2021年から現職。

聞き手:しらいしゆみか

この記事の注目ポイント!!

法人全体で地域を支える、ベテランが揃う事業所の特徴

しらいし

お二人がケアマネジャーになったきっかけを教えていただけますか。

辻さん

最初は介護職でしたが、相談援助の仕事に興味を持って、20代後半で夜間の大学で社会福祉士の資格を取りました。卒業後、病院のソーシャルワーカーとして働いていたときに、病院から「ケアマネの資格も取っておいたほうがいいよ」って勧められて受験したんです

ケアマネの資格取得には基礎資格が必要で、看護師、介護士、歯科衛生士、社会福祉士など多岐に渡ります。ケアマネ一人ひとりにいろいろな背景や経験があるのは、この資格の面白いところだと思います

大谷さん

私は、26歳のときに重度心身障害者施設で働き始めて、ヘルパー講座でケアマネジャーという仕事を初めて知ったんです。「その人らしい生活を一緒につくりあげていく仕事」って聞いて、すごいなって思って。
でも、働いていた施設は重度の方ばかりで、寝たきりの方が多くて。
私は通ってここに来ていて、家に帰るんですけど、この人の世界はこの施設の中だけなのかって、考えることがあったんです。
それで、在宅で障害や介護が必要な人の生活はどうなんだろうと興味がでてきて、在宅で暮らす方々の「その人らしい」生活を支えたいと思い居宅のケアマネを目指しました。

しらいし

居宅介護支援事業所の特徴を教えていただけますか。

辻さん

今は常勤のケアマネが6名、非常勤は2名の体制です。非常勤の方は定年後も活躍されているベテランで、幅広い年齢のスタッフが集まっています。

大田病院は、三法人で事業を運営しながら、在宅生活を支えるサービスを網羅していて、三位一体となって地域の皆さんをサポートしているんです。

法人内の訪問看護事業所は4つあって、それぞれに居宅介護支援事業所が併設されているんです。当事業所は、大田歯科ビルの中にあるんですが、同じビルに往診部門の在宅医療課や、歯科診療所もあるので連携がとてもスムーズなんですよ。

しらいし

利用者さんは、大田病院に通院されている方や退院された方が中心なのでしょうか?

辻さん

そうですね。退院後に支援が必要になる方がいれば、入院中から病院と連携して動きます。退院前にご自宅を一緒に見に行くこともあります。

大田病院だけでなく、他の大学病院などに入院されている方の場合でも、退院前には訪問看護師と一緒に病院のカンファレンスに参加します。
かかりつけ医や看護師と協力して、安心して自宅に帰れる準備を整えます。

しらいし

実際に利用されている方は、どのような疾患や障害をお持ちの方が多いですか?

辻さん

本当にさまざまですね。病院からの依頼だけじゃなく、近隣の地域包括支援センターからも依頼をいただきます。骨折で退院される方が福祉用具を借りたいというケースや、精神疾患のある方で、「なかなか家から出られないけど、外に出てリハビリを受けてみたい」といった相談もあります。

人情味のある温かな地域の抱える課題

しらいし

この地域ならではの特徴はありますか?

大谷さん

もともとこのエリアは、海苔漁業を営んでいた方も多くて、工場も多い下町なんです。職人気質の方が多くて、建前よりも本音で話すような。でも人情味があって、本当に温かい方が多いですね。代々住んでいる方が多くて、昔、海苔をやってたとか、貝剥きしてたっていう方もいらっしゃいますし。

住宅の特徴として、工場を営んでいた家は1階が工場、2階が生活スペースという造りが多いんです。元気なうちはいいんですが、足腰が弱くなると、細い外階段が大きな壁になってしまうんですよ。

辻さん

その外階段が大きなバリアになっているんですが、意外なことに家の中はバリアフリーになっているお宅も多いんです。「階段の上り下りができなくなってきたから、介護保険を使おうか」という相談が増えるきっかけになっています。

大谷さん

ただ、ここに大きな課題があって。介護保険の認定調査では、実は「階段の上り下りができない」という項目がないんです。
だから「階段が降りられず外出できない」という深刻な課題を抱えているのに、介護保険上では介護度が低く判定されてしまうケースもあります。

辻さん

このエリアは、経済的にも課題を抱えている方が多いんです。法人で無料低額診療事業(※)を行っているということもあって、生活保護を受けている方や、ギリギリの生活をされている方も少なくありません。
※全国福祉医療施設協議会/無料低額診療事業

法人内の生協では、フードバンクを運営していたり、法人内の診療所では「宿題外来」といって、子どもたちが宿題をしながらおやつを食べられる場を提供したりもしているんですよ。

大谷さん

生活困窮者とまではいかないものの、それに近い状況の方が多いと感じています。生活保護の対象にはならないけれど、ギリギリで生活している「制度の狭間」にいる方が結構いらっしゃいます。

介護保険を利用しないと生活が成り立たない方でも、費用の面で利用を控えてしまうこともあります。そういうときは、必要な介護サービスに優先順位をつけて、一緒に相談しながら決めていくようにしていますね。

ケアマネジャーの業務とみんなで支え合う職場のサポート体制

しらいし

日々働かれている中で、意識されていること、工夫されていることはありますか?

辻さん

ケアマネジャーの仕事って、書類作成も多いですし、実は業務の範囲がとても広くて曖昧なんです。たとえば、ご家族から「病院に行くから、ちょっと見ててもらえる?」と頼まれたり、往診や訪問看護の方から「電球が切れてますよ」って連絡をいただいたり。

「ケアマネに連絡をすれば安心」って思っていただけているのは、ありがたいことだと思っています。気軽に相談してもらえる関係ができているということですから。

ただ、本来ケアマネジャーの業務ではないんですよね。相談いただいた時に一人で抱え込んでしまうと、ケアマネ自身が疲弊してしまって、本当に必要な支援ができなくなってしまう。だから、「これはご家族でお願いできますか? 」とか「こちらの機関に相談してみましょうか」とか、利用者さんやご家族と対話しながら、一緒に考えるようにしています。

もちろん、ご家族がいない方の場合は動かなきゃいけない場面もあります。でもそんなときも、一人で抱え込まずに職場で「こういうことで困っているんだけど、どうしたらいい?」ってみんなで相談するようにしています。

しらいし

チームで支え合っているんですね。

辻さん

「じゃあ、一緒に家に行ってみようか!」とか、困ったときには協力しあって。ケアマネジャー自身が孤独にならないようにすることが大事だと思っています。

大谷さん

うちは8人もケアマネがいるので、相談すればすぐに誰かが教えてくれるんです。
ちょっと手の空いた人同士で自然と話し合いの場ができるのがいいんですよね。意見交換をすると、迷っていたところがスッキリ整理されて、次に進めるのですごくありがたいです。

受け止める力を磨く、ケアマネジャーとしての心構え

しらいし

ケアマネジャーさんは、一人あたり何人くらいの方を担当されているんですか?

辻さん

常勤で、だいたい37~38人くらいですね。うちの事業所は、大田区に届けを出して「特定事業所」として届出しています。その要件に、週1回の定例会議や、月1回の事例検討があって。
事例検討では、スタッフが多いので、いろいろな意見が出るんですよ。「そんな見方があるんだ!」って新しい発見があって面白いです。

ケアマネって基本一人で訪問するので、独りよがりになったり、言葉のパターンが固まっちゃったりすることがあるんです。だからこそ、定例会議や事例検討、ロールプレイなどで、お互いの気づきを共有することが大切だと思っています。

自分の態度や言葉の使い方ひとつで、相手との関係が良くも悪くも変わってしまいます。私は管理者という立場でもあるので、利用者さんはもちろん、スタッフへの言葉かけにも気をつけるようにしているんです。

しらいし

大谷さんは、ケアマネとして大切にしていることはありますか

大谷さん

まずは、利用者さんの価値観を受け入れることですね。「こうすればもっと良くなるのに」と思うこともあるんですけど、まずは気持ちを受け止めて、焦らないことが大切だと思っています。

無理に舵切りをすると、利用者さんにとっては苦痛でしかないですから。だから、「その人らしさ」を大切にしています

価値観は尊重しつつ、利用者さんが理解できる言葉で説明して、必要な選択ができる環境を整える。そうやって命や健康、生活を守れたらいいなと思っています。

私たちの仕事は、情報提供をして必要なところにつなぐこと、それから、チームづくりです。利用者さんを中心に、介護士、看護師、福祉用具の人、医師、地域のサポートなど、みんなでチームを作るんです。

高齢の方には、「どう生き切るか」の伴走者として、強すぎず弱すぎず寄り添うことが大切だと感じています。

印象に残る利用者さん。孤立を防ぎ、つながりを作る

しらいし

印象に残っているエピソードを聞かせてください。

辻さん

家の中に廊下があって、畳の部屋があって、全部折りたたまれた物がずーっと積んであって。部屋全体にですね。ただ、その積まれている物の隙間にお母さんと娘さんがいて。お母さんは寝たきりで、こんな大きな褥瘡(床ずれ)ができていました。

褥瘡の治療のために入院をされたんですが、退院前にベッドを搬入しようとしても、物が多すぎて入らない状況でした。ベッドを置くスペースを作るために、なんとか物を少し処分していただいて、ようやくベッドを搬入できました。環境を整えて、退院をむかえることができたんです。

親子二人だけの孤立した世帯って、介護保険を利用して初めて外の世界とつながることも少なくありません。そういうことがないと、どんどん孤立していくものなんだなって、そのとき実感しました。

しらいし

その利用者さんとつながるきっかけは、何だったんですか?

辻さん

近所の方が地域包括支援センターに連絡してくださったんです。包括がずっと頑張って通って、ようやく部屋に入れるようになったという感じです。

そういう連絡から支援に繋がることもありますし、ご近所トラブルから地域包括や区役所に連絡が入ることもあります。

孤立を防ぐためには、多少のお節介も必要かなと思います。

同じ法人の「包括支援センター平和島」では、月1回、団地の集会場でお茶会を開いたり、体操教室を開催しているんですよ。
そこに顔出しはしないけれど、催し物があるとわかっているだけでも、孤立予防の効果はあると思います。

大谷さん

私が印象に残っているのは、生活保護を受給している方で、月末になると「お金が無くてどうしよう」っていう連絡が来る方がいらっしゃいました。食べるものがないと「もう死ぬからいい」なんて言われることもあって。その都度対応しながら、なんとか一人暮らしを続けていた方です。

何かあればケアマネに連絡してくれる、SOSを出してくれる方でした。

こういう方は、基本的にケアマネだけでは抱えきれないので、地域包括支援センターの方と生活保護のケースワーカーさんと3人で連携しながら対応していました。

そんな中、だんだん認知症の症状がでてきて、ある日、家の鍵をなくしてしまう事件が起きたんです。
本当にどうしても鍵が見つからなくて。
週末の出来事だったので、ショートステイはどこも空いてなくて。

この方は、法人のフードバンクを利用していた方なので、病院でも顔を知られていて状況も把握してもらっていました。そこで急遽、大田病院に週末だけ入院させていただいたんです。

普段から生協や病院とうまく連携が取れていたので、なんとか入院ができました。本当に良かったなと思えるケースでした。

ICT化で変わる、ケアマネの働き方と今後の展望

しらいし

お二人の今後の展望や、頑張りたいことを教えてください

大谷さん

ケアマネも高齢化が進んでいて、人手不足なんです。ケアマネの資格を持っているのに、介護職に戻る方も多いんですよ。

でも、ケアマネって本当に奥が深い仕事で、大変なこともたくさんあるんですけど、その分やりがいもあります。もっと「ケアマネになりたい」と思う人が増えてくれるといいなと思っています。

辻さん

2026年1月からタブレットを導入して、音声入力で記録の手間を省こう!って取り組んでいます。今は、書類作成に時間を取られすぎて、本来やるべき相談業務や調整に時間が取れなくて。

国もICT化を推進していて、事業所間でデータで情報をやり取りできる「データ連携」という仕組みが推奨されているんです。

課題はたくさんありますが、みんなで励まし合いながら進めていきたいです。ケアマネ自身が、プライベートの充実や家族との時間をきちんと持ちながら、仕事も楽しんでできる。そんなバランスの取れた運営を目指したいと思っています

30代、40代の若い方にも「ケアマネジャーって面白そう!やってみたい」と思ってもらえるようにしたいですね。

あせらずに「その人らしさ」を受け止める。それが私たちの理念

しらいし

最後にお二人のケアマネジャーとしての理念を聞かせてください。

辻さん

「焦らず、その人らしさを受け止める」ですね。これは利用者さんに限らず、職員に対してもそうだと思っています。

大谷さん

課題がいっぱい出てきて、難しいな、どうしたらいいんだろうって、私自身がパニックになりそうなときもあるんです。でも、利用者さんはもっと混乱しているだろうなって思ったりします。

専門職だと先行きが見えたりもするんですけど、ご本人さんが一番混乱しているときに、性急にことを進めたくないなっていうのもあったりもするので。

急がないで、まず利用者さんの話を受け止めて、その人がどう考えるのかを大切にしていきたいです。

辻さん

大谷さんが言ったように、本当に「急がない」って大事ですよね。理想を思い描くことは大切ですが、現実とのギャップもある。でも、そのギャップに一つひとつ向き合いながら、利用者さんの「その人らしさ」を大切にしていく。そのプロセス自体が、ケアマネジャーの面白さだと思っています。

文:えぼしまなみ / 編集:しらいしゆみか / 撮影:nao

会社データ
・会社名:社会医療法人財団おおもりまち訪問看護ステーション 
・所在地:大田区大森東4-3-11 大田歯科ビル4階
・設立年:2000年
・ホームページ:https://jounan-st.com/omorimachi/

おおもりまち訪問看護ステーション 
・所在地:大田区大森東4-3-11 大田歯科ビル4階
・営業時間:平日8時50分~17時35分 (土日祝日、年末年始休み)
・従業員:常勤6人、非常勤2人
・主な業務:ケアプラン作成、事業者との連絡調整・紹介等のサービスなど
・特徴:病院や地域包括支援センターと連携を密に取り、積極的に困難事例を受け入れ、利用者の立場に経った公正中立なサービス提供を心がけている。医療機関居宅介護支援事業所としての強みを活かし、医療依存度の高いケースを積極的に受け入れている。住み慣れた土地で安心して住み続けられるよう、利用者に寄り添った援助を目指している。

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