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【インタビュー】「自宅が病棟、クリニックがナースステーション」。ツインハート在宅クリニック蒲田・木村先生が飛び込んだ在宅医療

循環器内科医として大学病院で14年間キャリアを積み、2021年に自宅からほど近いツインハート在宅クリニック蒲田へ入職。2023年には副院長に就任した木村眞樹子先生。「自宅が病棟、クリニックがナースステーション」という院長の言葉に惹かれて飛び込んだ在宅医療の現場で、これまでの歩みと、日々大切にしていることをじっくり伺いました。

PROFILE
ープロフィール紹介ー

木村 眞樹子(きむら まきこ)さん
ツインハート在宅クリニック蒲田 副院長
循環器専門医/総合内科専門医/日本睡眠学会総合専門医/認知症サポート医/認定産業医。大学病院にて初期研修後、同院の循環器内科へ。14年間の在籍中、関連病院・附属病院・附属クリニックで病棟、CCU(心臓疾患の集中治療室)、外来を経験する。2021年にツインハート在宅クリニック蒲田(当時はファミリークリニック蒲田)へ入職。2023年4月より副院長を務める。

聞き手:しらいしゆみか、まつなが

この記事の注目ポイント!!

「資格を持て」という刷り込みと、心電図一枚で心臓を見抜く指導医への憧れ

しらいし

木村先生が医師を目指されたきっかけを教えてください。

木村先生

それはあんまり記事になるようなものではなくて(笑)。父が外資系の会社に勤めていて、女性の上司の方も多くて。「これからは女性も活躍していく時代だ」というのを肌で感じていたんでしょうね。

私を含めて3姉妹なので、「資格を持て」というのは常々言われていて、結構刷り込みの部分が多かったんですけどね。

父自身、本当は医者になりたかったんだろうなとは思います。子どもの頃から「医者になれ」って言われていて、常に選択肢の中には入っていました。

小学生の頃に祖父を肺がんで亡くしていたこともあって、勉強を頑張るうちに医者という道が具体的になっていったんだと思います。

しらいし

その後、大学病院で循環器内科を専門にされていきますが、進路を決めたきっかけは何だったんですか。

木村先生

最初のきっかけは心エコーです。学生時代の実習で循環器を回ったとき、中堅の先生について毎日朝から夕方まで座らずに延々と回診について回るだけだったんですけど、あるとき1回だけエコーを当てさせてもらったんです。

そうしたら本当に動いているんですよね、心臓が。目で見えて動いているのがすごく印象的でした。

研修中は、循環器内科の指導医の先生への憧れも大きかったです。すごく偉い先生なのに、面倒見が良くて分け隔てなく教えてくれるんですよね。しかもめちゃめちゃ頭がいいし、心電図を一枚見ただけで、その人の心臓の形も電気の流れもわかってしまうんです。

その先生の講義が週2回、始業前にあって、ほかの科を回っている間もずっと通い続けました。

病院という場所で見えた、患者さんの「一面」

しらいし

大学病院には14年間在籍し、病棟、CCU、外来をそれぞれ経験されています。外来と病棟で、患者さんとの向き合い方に違いを感じられることはありましたか?

木村先生

週1回の外勤先の外来に通ってくる患者さんが、その日一番のおめかしをして、きれいに化粧をして、お菓子を持ってきてくれることがあって。「先生に会いに来るためにこんなにおめかししてきているのよ」というのが伝わってきて、その人の生活のごくごく一部だけを見ているんだな、と思いました。

母からも、近所のクリニックはいつも井戸端会議の場になっていると聞くんです。でも調子が悪いと来ない。病院に行くのはしんどいから、と。

外来は、体調を崩さないようにメンテナンスしていく場所。患者さんは「よそ行きの顔」で来られるので、その方の一面しか見られていないもどかしさがありました。一方、病棟は体調を崩した状態で入院してくる分、もっと踏み込んだ話ができる。私はどちらかというと、病棟業務のほうが自分に合っていると感じていました。

コロナ禍で半年早まった、大学病院からの卒業

しらいし

訪問診療へ移られたのは、コロナ禍がきっかけだったんですか?

木村先生

その時期が微妙で。いつかは大学を離れるけれど、それはいつなんだろう、とずっと思っていたんです。積極的に就活をしていたわけじゃないんですけど、たまたまここのクリニックを紹介会社さんに紹介してもらって、見学に来て面接をして。

「こんな家の近くに、こんな素敵なところがあるなら、ぜひ就職したい」と思ったんですが、すぐに辞めるつもりはなかったので「1年半後の就職でもいいですか?」と。それでもいいですよと言ってくれて。

当時は大学附属のクリニックで外来を担当していたのですが、コロナ禍で患者さんがぱったり来なくなって。体制を縮小することになり、それを機に予定より半年ほど早く大学を離れました。

入職まで期間が空くのに受け入れてくださったクリニックには、今も感謝しています。

しらいし

大学を離れるかもと考えていたのは、働き方やキャリアの積み重ね方も関係していたんですか?

木村先生

大学に残っていくのは、研究や論文、学会活動で大学に貢献していく人なんですよね。みなさん、自分の専門をライフワークのように突き詰めていく。でも私は研究や論文がとても苦手で、そこまでのめり込めるものがなかったんです。

物理的にも家から1時間半弱かかるんです。2人目を産んだ後にCCUに復職したんですが、ずっと続けるのはきついなと。

それに、病棟を診ているといつまでも患者さんのそばにいたくなってしまう。家庭との両立を考えると、どうしても中途半端になる。その感覚が自分で許せなかったんです。

しらいし

ツインハート在宅クリニック蒲田に決められたのは、どんなところだったんですか?

木村先生

転職するなら自宅から近いところ、とは思っていました。それまで訪問診療にはほとんど接点がなく、漠然と興味がある程度だったんです。

そんなとき見学で、院長から「自宅が病棟、クリニックがナースステーション」という言葉を聞いて。病院でやっている医療をそのまま在宅に持ってくる、というようなお話だったと思います。外来のように継続的に関わりながら、病棟のように患者さんの生活そのものに深く関わることができる、そのスタイルに強く惹かれて、入職を即決しました。

病棟のほうがやりがいや楽しさを感じていたのは、その人の社会背景まで踏み込んで関われるからだと思うんです。

ただ入院は、生活から切り離した私たちのテリトリーに患者さんを迎え入れる形。在宅では、その人の生活の中に私たちが飛び込んでいくイメージなんです。そういう形で関われるのはすごく魅力的だなと思いました。

「今まで本当に循環器しか診ていなかった」総合診療医としての気づき

しらいし

在宅なので病棟と全く同じようにはいかない部分もあると思うんですが、最初のギャップはありましたか?

木村先生

もともと求められていることに応じるスタイルでやってきたので、違和感はあまりなかったです。ただ、総合診療を掲げるクリニックで、訪問先では医者は自分一人という環境になって、「今まで本当に循環器しか診ていなかったんだな」と実感しました。

しらいし

それはたとえば、どういう出来事があったんですか?

木村先生

褥瘡、いわゆる床ずれは、病棟ではまったく触れたことがなかったんです。病院では皮膚・排泄ケア認定看護師(WOC)が回ってきて対応してくれていたはずで、専門職に支えられていたんだなと気づきました。

ほかに大きかったのは爪切りですね。ご家族から「怖くて切れなくて」と相談されることもあって、爪切りを買い、「切っていいですか?」と聞きながら自分でも切るようになりました。

施設の定期訪問で「耳が聞こえないんです」と言われたときは、最初「耳鼻科に連れて行ってもらってください」と答えてしまったんです。実は耳垢が固まっていただけで(笑)。それ以来、耳鼻科用のピンセットを持ち歩いています。

爪も耳垢も病気ではありませんが、そんなちょっとしたことが在宅では生活に直結する。そこに驚きました。医療的にというより、生活の中で困っていることをどう調整していくのか。それが在宅の面白さでありやりがいです。

ケアマネさんも訪看さんも欠かせない存在で、一つの事業所だけでは完結できないからこそ、いろいろな事業所さんと密に連絡を取って、その人の生活を成り立たせていく。そこが面白いですよね。

しらいし

先生が総合診療医として大事にされている役割は何ですか。

木村先生

循環器の疾患だけじゃなくて、他の疾患も全部まとめて、その人の主治医として関わっていくことです。

一つの疾患だけで済む人のほうが少ないわけで、今までいろいろな病院にかかって大変だった部分を全部巻き取れるのは、在宅医療、総合診療だからこそだと思います。もちろん専門の科に紹介する見極めも大事な仕事です。

「医者より看護師さんのほうが情報を持っている」副院長として大切にしていること

しらいし

副院長としては、どんな役割を担われているんですか。

木村先生

蒲田院は蒲田西・蒲田東・蒲田南の3エリアを、それぞれ常勤医2名で担当しています。私はJR蒲田駅より西側の蒲田西エリアで、状態が安定している方から緩和ケアの段階にある方まで幅広く、1日10名前後を診ています。副院長としては、日々の診療と並行してできる範囲のことをしている、というのが実態です(笑)。

在宅医療が初めての先生の相談に乗ったり、循環器のことで相談を受けたりすることもあります。大学病院から受け入れている学生実習や、当院で受け入れている看護師研修でも指導役を務めています。院内はGoogleチャットで情報共有していて、自分の担当患者でなくても頻繁に話題に上る患者さんについてはカルテを開いて状況を確認するようにしていますね。

週1回は緊急往診専用のルートにも出て、ほかのエリアで緊急に呼ばれやすい患者さんの状況も把握しています。カルテや緊急往診で気になったケースは、主治医の先生と一緒に方針を考えることもあります。

木村先生のデスク。忙しい日々の様子がうかがえます
しらいし

ここで、訪問看護の現場で木村先生とご一緒することが多い、ぷらかま運営メンバーのまつながさんにも伺います。先生との出会いはどんなきっかけでしたか?

まつなが

訪問先のお宅で、主治医だった木村先生の診察とかぶって、そこで直接話したのが最初のご縁です。「なんて相談しやすいんだろう、なんでこんなに看護師の話を聞いてくれるんだろう」というのが、そのときの一番の印象でした。

しらいし

先生ご自身、そういうところは意識されているんですか?

木村先生

最初はめちゃくちゃ意識していました。今はそれが当たり前になっていますけど。若く見られることもあって、肩書きで信頼してもらえるタイプではないので(笑)。だったら、話を聞いてくれる人として信頼関係を築いていこうと。

それに、訪問の頻度も滞在時間も看護師さんのほうが多いので、医者より看護師さんのほうが絶対に情報を持っているんです。そこから聞かないでどうするんだ、というくらいです。私が聞けないことを看護師さんに聞いてもらえたらいいなと思うし、ケアマネさんもそうです。患者さんも、相手によって話しやすいことは違うものなので、間口はできるだけ広くしておきたいと思っています。

事務所のスタッフのみなさん、笑顔がすてき!

家で看取ること、助けを呼べない人に届くこと

しらいし

これこそ在宅だからできることだな、と思うようなエピソードはありますか?

木村先生

家で看取るのは、在宅でしかできないことですよね。それがうまくいって、残されたご家族も穏やかに過ごせると、すごくよかったなと思います。以前担当した知人のご家族は、がんで通院が難しくなり、最後は家で過ごしたいと。

要介護認定も受けていなかったんですが、それはご家族がまだ若くて何でもできてしまったことや、ご本人がギリギリまで動けたこともあったからで。なんとか看護師さんに入ってもらって、最期はご自宅で穏やかに過ごされました。

しらいし

一般の方は「徐々に弱っていく」イメージを持っているかもしれませんが、急に状態が変わる方も多いですよね。

木村先生

多いですね。人間、ギリギリまで平衡を保とうとするので。だからこそ、崩れてしまう前にどうにかしておきたいんです。

しらいし

これから力を入れていきたいことはありますか?

木村先生

潜在的に、家で頑張りすぎていて外に助けを呼べない人が少なからずいると思うので、どうしたらアプローチできるんだろうな、というのはずっと考えています。

サービスを入れるのに抵抗があったり、「まだ頑張れる」と思っていたり。急に倒れれば入院して支援につながりますが、徐々に動けなくなる方は家で頑張ってしまうんです。

介護保険の認定を受けていても、相談先につながっていない方は少なくないと聞きます。そういうケースは氷山の一角なんだろうなと思います。

しらいし

病院から在宅に移った看護師が「この薬、飲んでないの?」と戸惑うことも多いと聞きます。どこまでをその人らしさとして尊重するか、難しいですよね。

木村先生

以前、上級医の先生が「入院してきた患者さんの状態を、いかにスマートな検査や治療で整えていくか。まるで一つの作品を仕上げるような気持ちで向き合っている」と話していたことがあって、なるほどなと思ったんです。それも病院の大切な役割です。

でも、病院で整えた状態が、そのまま家での暮らしに続くわけではありません。病院は病院、在宅は在宅なんですよね。

在宅では、医療的に気になることがあっても、まずは本人が望む暮らしを大事にしたいと思っています。医療や介護、環境調整を通じて、本人が自分らしく暮らせるように整える。

薬がたくさん残っているなら、薬局さんにも入ってもらって一包化したり、飲み方を変えたり。それが訪問診療の役割だと思っています。

しらいし

ケアマネさんや包括に相談すると、サービスをたくさん勧められるのでは、と構えてしまう方もいるかもしれませんね。

木村先生

病院に行ったら入院になるかも、薬が増えるかも、と心配される方も多いですよね。でも、無理に何かを始めるわけではないので、まずはその心配ごとを相談してきてほしいんです。

「一生楽しく暮らしたい」。患者さんの家の前で「よし」と入るスイッチ

しらいし

最後に、木村先生の座右の銘や、大切にしていることを教えてください。

木村先生

座右の銘と言われると……「一生楽しく暮らしたい」でいいですか? ただ遊びたいだけ、みたいですけど(笑)。

休みの日は、子どもの送迎で終わることが多くて、最近はPTAや自治会にも出ています。子どもの学校の学園祭でパンケーキ屋さんをやるらしくて、その準備にも駆り出されているんです(笑)。

しらいし

診療中とプライベートで、先生ご自身の雰囲気って違ったりするんですか?

木村先生

プライベートは本当に人見知りすぎて、全然しゃべれないんです(笑)。
患者さんのお宅に入る前に「よし」と気合を入れて入ります。声のトーンも上がっていて、患者さんの前では元気を装っているところがありますね。

しらいし

診療では生活の中に飛び込み、休日は自治会やPTAで地域に関わる。同じまちで暮らす先生がいるのは心強いですね。本日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー後、すぐに次の訪問に向かう木村先生をお見送り
ツインハート在宅クリニックのラッピングバスが、蒲田の街を走っています

取材・文:しらいしゆみか / 撮影:nao

会社データ
・会社名:医療法人社団双愛会
・設立年:2005年
・ホームページ:https://www.twinheartmedical.com/
ツインハート在宅クリニック蒲田
・所在地:東京都大田区南蒲田2-4-19 ANTビル4F
・営業時間:平日9:00~18:00 ※かかりつけ患者様は24時間365日の緊急往診対応
・担当エリア:蒲田西・蒲田東・蒲田南
・お問い合わせ:TEL 03-5480-1810/FAX 03-5480-1823
【在宅医療に関するご相談を随時受付中】

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